毎日Netflix

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主にNetflixで観た映画の紹介、劇場で観た映画も。

『ワンダー君は太陽』をNetflixで観た。トリーチャーコリンズ症候群という、顔が変形してしまう病気の子の映画。文句無しの良作。泣く。

ワンダー君は太陽

 トリーチャーコリンズ症候群。
 顔の頬骨や顎の骨が未発達のまま生まれ、目が垂れ下がってしまう病気らしい。
 以前ネットの番組で、この『ワンダー君は太陽』という映画の紹介とともにトリーチャーコリンズ症候群の青年が出演して、病気の話や日常を話していたのを見たことがある。それ以来気になっていた映画。
 実際にこの病気の人を見ると正直その見た目は確かに異様ではあるが、しばらく見ていると慣れてくる。段々可愛く見えてきたりもする。
 この映画の主人公オギーを演じるジェイコブ・トレンブレイはメイクでトリーチャーコリンズ症候群の少年を演じているのだが、普通に可愛いのでそこはちょっとリアルじゃなかったなと思ってしまった。が、この映画に込められているメッセージを考えるとそこはどうでも良い部分だということがわかる。
 この映画に込められているメッセージ。それはこの症状の現実や同情を買うようなものではなく、こういう病気があるということを知り、そしてこの病気に関わらず同じような状況に立った時の立ち位置。すなわちこの映画を観た我々が起こす行動。その時が来た時にどういう立ち位置でどう行動を起こすのか、その手助けとなる為に綺麗過ぎるほどの純粋な泣ける映画として作られている。
 若年性アルツハイマーを描いた『アリスのままで』という映画にも通じる、あえて綺麗な部分を凝縮させた傑作。

全世界で800万部以上を売り上げたR・J・パラシオのベストセラー小説「ワンダー」を、「ウォールフラワー」のスティーブン・チョボウスキー監督・脚本で映画化したヒューマンドラマ。ごく普通の10歳の少年オギーは、生まれつきの障がいにより、人とは違う顔をもっていた。幼い頃からずっと母イザベルと自宅学習をしてきた彼は、小学5年生になって初めて学校へ通うことに。はじめのうちは同級生たちからじろじろ眺められたり避けられたりするオギーだったが、オギーの行動によって同級生たちは少しずつ変わっていく。「ルーム」で世界中から注目を集めた子役ジェイコブ・トレンブレイがオギー役を務め、「エリン・ブロコビッチ」のジュリア・ロバーツが母イザベル役、「ミッドナイト・イン・パリ」のオーウェン・ウィルソンが父ネート役をそれぞれ演じる。(以上、映画.comより)
↓予告はこちら

94点

 まずこの邦題の意味。劇中にも出てくる表現、オギーという太陽が衛星に影響を及ぼす太陽系のお話。
 劇中で変わっていくのはオギーではなく、周りなのだ。
 それぞれがそれぞれの立ち位置を確認し、そこから最適な立ち位置へと動く行動力をオギーという太陽から受けた影響により受け取る。
 オギーはとても強い子である。
 冒頭で書いたトリーチャーコリンズ症候群の青年がネットの番組で言っていたことの一つに、自分に対する周りの目は嫌かと言ったらそこはもう慣れている部分があって一々気にしなくなったと。
 ググったら海外でも同じ症状の人がQ&Aをやっていて、同様の回答をしていた。
 その人はそういう時、自分から目を合わせてニッコリ笑顔を見せるらしい。
 トリーチャーコリンズ症候群というものを知っている状態でも初見ではギョッとしてしまうのだが、知らない状態だと本当に驚かれるだろう。
 その人は心無い言葉をかけられることもあるが、そういう時には必ず周りの人が助けてくれるという。
 大きな声で罵倒されてもそれ以上大きな声で制してくれるらしい。
 いい奴ばかりじゃないけど悪い奴ばかりでもないとはザ・ブルーハーツ真島昌利が書いた詩であるが、いい奴は意外にいっぱいいると思う。
 しかし子供の世界は違う。劇中でもオギーが言っているが、子供にとっては大人より子供の方が苦手だということ。
 理性が育っていない子供によるオギーに対する接し方はやはり残酷なものであった。

 自宅学習をやめて学校へと通わせる決断をしたオギーの母。自分の判断が間違っていないかという不安とともに生きる。
 オギーにかかりっきりの両親に若干の寂しさを感じるオギーの姉。
 学校での立ち位置、スクールカースト中位で揺れるオギーの友人。
 などなど、オギーを太陽とした太陽系の衛星が彼らであり、彼らの物語もしっかり描かれる。
 昔は仲が良かった友人といつのまにか疎遠になってしまったオギーの姉、ヴィア。
そんな経験誰にでもあるのではないだろうか。だからこそ深く心を突いてくる。
 オギーの友人となるジャックもオギーが現れた影響がクラスに渦巻く中、クラスでの立ち位置に迷う。
 クラスでの立ち位置問題、誰もが通る道。ちなみに自分は隅っこタイプでした。

 劇中1番強いのはオギーなんじゃないかと思うくらいにオギーは壁を乗り越えていく。
 自分から話しかけるなんてことなかなか出来ませんよ。
 挫けても立ち上がり続けるオギー。
 「こんな奴なかなかいない」「現実はもっと残酷」なんて思う人もいるかもしれない。ではその残酷な現実が起きている状況が目の前で起きていたのならあなたはどういう立ち位置を取りますか?
 この作品はトリーチャーコリンズ症候群に関わらず、社会から攻撃を受けやすい人たち自身に向けられて作られているわけではないと思う。そこにいる傍観者に向けてのメッセージが込められているような気がします。このような作品に出会うことできっと行動が変わってくるでしょう。
 逆に映画や本などの文化に触れずに育つとLGBTQへの理解も進まず、性暴力被害者への侮辱行為も止まりません。日本では政治家がそんなんだったりしますからどうしょうもないですね。
 
 ここまで触れてこなかったですが、父親役のオーウェン・ウィルソン。個人的に大好きな俳優さんでして。ウディ・アレンが脚本、監督をした『ミッドナイト・イン・パリ』という名作の主役を演じた人なんですけど、そのキャラクターが好きすぎて今作の彼を見てもどこか同一人物的な匂いを感じてしまうのがちょっと面白かったです。
ミッドナイト・イン・パリ』はNetflixに入っておりますので是非観てみてください。大好きな映画です。
 懐古厨が自分の好きだった頃の時代にタイムスリップして、史実でしか知らない有名人と直で会ったりするSFです。
 主人公のキャラクターは一種のコミュ障。
 自分もそうなのだが、友達の友達も呼んで遊ぶとなった時の微妙な気持ちに通ずるシーンがあったりと気持ちがわかりすぎる描写に惹きつけられました。
 1人別行動を取って街をブラブラする感じも夏フェスに行った時を思い出しました。フェスは1人行動派。普段もですけど。

 そんなわけで、演者が全員良い『ワンダー君は太陽
 文句なしの良作でした。個人的にお姉ちゃんの疎遠になった友達とのエピソードが特に好きでした。疎遠になった理由、そしてラストへの展開。
 ベタなんだけどそれが良い。作品全体を通してそんな印象を受ける映画だった気がします。
 
↓絶賛原作本です。

↓太陽に影響を受ける衛星のサイドストーリー。

↓保存版Blu-ray

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