毎日Netflix

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主にNetflixで観た映画の紹介、劇場で観た映画も。

今更ながら『イカゲーム』(ドラマ)をNetflixで観た。韓国映像作品への個人的な偏見は完全に消え去った。演出、脚本、俳優、全てが高クオリティ。終盤の展開に残念な部分はあったが全編通してサイコーに楽しめたのは間違いない。(後半ネタバレ有り)

イカゲーム
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 世界各国で視聴数ランキング一位を記録し、Netflixで視聴されたドラマの初月視聴数一位というとんでもないバズり方をした『イカゲーム』
 自分は仕事の休憩中、Netflixの『まもなく配信』をチェックするのが日課となっており、また何か面白そうな設定の物を出してきよったな韓国、と思いつつリマインド設定をポチっていたのでほぼ配信開始と同時に視聴を開始しておりました。
 既に観終えてからしばらく経っておりますが、このビッグウェーブに乗るっきゃない!なんて思いつつズルズルとこんな時期まで来てしまった感じです。前もあったなこんなこと。

 所謂、デスゲーム物として軽い気持ちで観始めたものの、話が進むごとに深いテーマが描かれ、しっかり社会派ドラマとしても成り立っている、そんな作品でした。

勝てば天国、負ければ…即死。賞金に目がくらみ、奇妙なゲームへの招待を受けた参加者たちを待っていたのは、昔ながらの遊びを取り入れた死のゲームだった。(以上、Netflixより)

↓予告はこちら

87点

 韓国の映像作品における演出、演技の個人的なイメージとして、冷静と情熱の両極端、というのが個人的にあったのですが、韓国の映画を何本も観ていくと決してそういうこともなく、寧ろクオリティの高さに圧倒されることが多く、元々あったイメージはもう既に吹っ飛んでおります。
 初めてまともに観た韓国ドラマ『キングダム』は最高に楽しめましたし、次に観た『マイディアミスター私のおじさん』は生涯ベストドラマランキング第二位に鎮座しております。
 そこにやってきた『イカゲーム』
 ドラマというのは中々時間を取られる物なので観始めるのに少々勢いがいるところですが、このポップな色調にデスゲーム物という組み合わせはとても興味をそそると同時に試しに観てみるかという思いにさせる、いわば確信犯ですよこれは。
 まんまと策にハマって試しに観た層がそのまま沼に引き摺り込まれていく。
 これがやはり視聴数一位という記録に繋がったといえるでしょう。
 韓国といえば国を挙げて工作をするイメージがありますが、前提として質が良くなければここまでの拡がりは無いわけで、工作があったにせよ無かったにせよ面白いのは事実なので嫌韓の方も是非良ければ観てみてはいかがでしょうか、なんつって。
 
 デスゲームものということで、『カイジ』だったり『神様の言う通り』のパクリだなんて一部で言われておりますが、デスゲーム部分を見てもカイジとは違うシンプルなゲームが主体となっているのでこれはパクリとは言わないと個人的には思っております。ジャンルが同じくらいのニュアンス。
 神様の言う通りは正直観るに耐えなく30分ほどで離脱してしまったのでよくわかりません。どんな映画でも最後まで観るようにはしておりますが、ごく稀にこういうとことん合わない作品が出てくるもので。『だるまさんがころんだ』は確かに被ってはおりましたが、デスゲーム物を作るにあたってこのゲームを出してくるのは正直被ってもしょうがないくらいデスゲームと親和性のあるゲームだと個人的には思っております。
 何よりデスゲームに主体を置いているこの二作品と違ってイカゲームはヒューマンの方に振っていると感じました。
 まるでダメなおじさんが、デスゲームを勝ち上がっていく。それにはゲーム自体が複雑だと成り立たない。故に運で勝ち上がれるくらいのシンプルなゲームでのデスゲームになっている。
 
 各キャラクターの立たせ方も見事。終盤まで観ていく最中、デスゲーム物故にこんなにも愛着の湧いた彼らが退場させられていくのかと思うと悲しみとともに勿体なさを感じてしまった。
 退場しない線も考えられるぞ?なんつってたらもうそれもまた製作側の思う壺、その勘繰り自体がミスリードにハマっている。
 どれがミスリードなのか、製作側は特に色々勘繰らせようとしているわけでは無い、こっちが勝手に勘繰って先を枝分かれさせる。これも見事。ミステリー物を観慣れた者であればあるほど予想した展開を裏切られる快感を求めている。
 彼らの行く末はイカに。
 
 -ここからネタバレ-
 
 何がミスリードなのか、何が勝手に勘繰らせたのか。
 刑事も現場に潜入しているという展開、これでラストが見えてきた。
 観始めた前半は正直舐めていた部分もあり、どうせシーズン2、3と続けていくつもりだろうと、そうなるとここでせっかくここまで立たせたキャラクター達を退場させるなんてことはしないだろうと。
 この刑事の奮闘を並行して描くことで緊張感を高め、最終的に脱出が成功し、主要キャラ生還の流れ。
 そんな流れだと流石にありきたりで残念だにゃーなんて観ていたらもうバッサバッサと退場させられていく愛着の湧いたキャラ達。
 この展開には潔さを感じました。
 衝撃の六話目、ビー玉回。
 あの女の子二人の別れには震えました。親を国に残して脱北した彼女の苦労は、北朝鮮の現実を描いた映画『トゥルーノース』を観るとより深く感じられるので未見の方には是非観て欲しいところです。

 韓国発の作品には北との関係を描いた描写が出てくることが多いので、北系の作品を観ていて損は無いです。
 Netflixからはもう消えてしまった『太陽の下で〜真実の北朝鮮〜』
 Netflixどころかどこで観られるのかわからない『ザ・インタビュー』なんて作品も面白かったですね。
 『将軍様、あなたのために映画を撮ります』なんて作品もありました。
 今、Netflixの中でお勧めするならやはり『トゥルーノース』でしょうか。
 観るに耐えない現実をアニメーションで描くことにより観やすくなっている、らしい。

 脱北という勇気ある行動にて韓国にやってきたセビョク。北に残された母を取り戻す為の金を手に入れるためにこのゲームに参加。
 絶対に負けられない強い思いを持っている。
 対して鼻ピのジヨンは牧師である父親に性的暴行を日常的に受け続け、母を殺したその父親を自分が殺し、刑務所へ。出所後行く宛も無い中このゲームに参加。
 漂う無気力感が物悲しい。未来が見えない彼女の行動に心が震えた。
 未来への希望を持つセビョクの為、笑顔で命を捧げる。
 生きて帰ったとしても行き着く先は自死だと悟っていたのだと思う。
 彼女の最期の笑顔を思い返すたび、悲しく、なんとも言い難い切なさの感情が溢れてくる。

 六話目のビー玉回、ここがピークですね。ここからは残念な部分が出てきます。
 ガラス板渡りでは勝ち抜いた三人のうち一番後ろに居たセビョクに爆破されたガラスの破片が突き刺さるという物語を劇的に動かす為の強引な展開。
 黒幕の正体が想定の範囲内過ぎて驚きが無かったり、この既視感は『SAW』におけるジグソウから来ているのかもしれない。
 そしてその黒幕の動機がまた弱い。なんともスッキリしない。
 ラストのイカゲームがただの殴り合いになっていた部分は、このゲームに嫌気がさして吹っ切れたギフンを表していて良かったと思う。
 描きたいのはヒューマンであってデスゲームクリア劇ではないのだ。
 
 イメージ的にはマンガみたいな展開があったりしそうでしたが、観てみると意外にしっかりリアルな描写が溢れていました。
 むしろ最近観終えた『地獄が呼んでいる』の方がマンガ的な展開があったりで残念な部分が多かった。リアルだとそうはならないよね、的な。大衆ってそんなじゃないよね、的な。面白いっちゃ面白かったんですけど。

 これを機に韓国ドラマに興味が湧いた方は是非『マイディアミスター〜私のおじさん〜』を観てみてほしいです。
 イカゲームとは全く違うジャンルですが、本当に心が震えてしょうがない傑作です。
 こちらは一話が長く、話数も多いのでとっつき難いかもしれませんが、確実に心を打ちます!マイベストドラマランキング二位です!ちなみに一位はオレンジイズニューブラック。三位はダーク、もしくは池袋ウエストゲートパークかってところですかね!
 
 Netflixにおいてドラマは特に興味が無かったはずがもうすっかりドラマにもハマっているという。
 丁度今コブラ会を観終えて新聞記者を観だしたところ。
 ノーマーシー

 おわり。


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