『ドラゴンクエストユアストーリー』をNetflixで観た。酷評されていた最後の展開、寧ろソレが良かった。おそらく意図せず作られた残念な部分が結果的にハマる奇跡のラスト。ゲーム愛全否定とか言われていたけど逆ですよこれ、ゲーム愛全肯定のラスト。(ネタバレ有り)
ドラゴンクエストユアストーリー
ドラゴンクエスト5。スーパーファミコンでは初のドラゴンクエスト。
個人的には4が一番好きなんですが5の人気は圧倒的ですね。
実写映画化というのを知ったときには不安の方が強かったのを思い出します。
漫画だったり、アニメの実写化に実は肯定的なのですが、いかんせん成功例が少ない気がしますね。るろうに剣心あたりは成功している部類だと思います。あのアクションは間違いなくイケてます。
まずこのような漫画やゲームの実写化に起用される監督が誰なのかで何かを察してしまう、そんな感覚が邦画にはあります。
上の人たちによる「とりあえずこの人に作らせとけばええやろ」的な決め方には頭の硬さを感じてしまいます。
いっそのこと海外の製作陣に作って欲しい、なんて思ったりもします。ドラゴンボールはアレでしたけどしっかり作れば面白い物が出来ると思うんですよ。一回チャウシンチーに作って欲しい。ドラゴンボール。
今回紹介するドラゴンクエストユアストーリーはゲームの実写化。監督、脚本はおなじみ山崎貴、ということで正直「あぁ...」となってしまいました。
スタンドバイミードラえもんだかいうアレをアレした監督。
個人的に完全に合わない監督。しかし今作ドラゴンクエストユアストーリーにはその『合わなさ』が最後の展開でしっくりハマってしまうという嬉しい罠が仕掛けられていました。
これはヤラレタ!伏線の置き方が強引でモヤモヤしていたのも全て覆された!全てが結果的に見事な伏線になっていたこの体験は想像を遥かに超えました。
そしてゲーム全否定という酷評がネット上を駆け巡っていましたが、いざ観てみると全くの逆、ゲーム全肯定のラスト。
何を観てゲーム全否定と感じたのか。どう取ればアレを逆に取る事になるのか。例のセリフを誰に言わせ、誰に打ち倒させたのかを考えればわかるはずなのに。
1986年の第1作発売以来、シリーズを重ねて国民的RPGとして人気を誇る「ドラゴンクエスト」の5作目で、92年に発売された「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」を原案に3DCGアニメ映画化。総監督に山崎貴、監督に八木竜一、花房真と「STAND BY ME ドラえもん」を手がけたスタッフが結集し、オリジナルゲームの生みの親である堀井雄二が監修、同じく「ドラクエ」テーマ曲などで知られる作曲家すぎやまこういちが音楽を担当した。声優は佐藤健、有村架純、波瑠、坂口健太郎、山田孝之ら豪華俳優陣が務めた。少年リュカはゲマ率いる魔物たちに連れ去られた母マーサを取り戻すため、父パパスと旅を続けていた。しかし、道中での魔物たちとの激闘により、パパスはリュカの目の前で非業の死を遂げてしまう。それから10年後、故郷に戻ったリュカは「天空のつるぎと勇者を探し出せば、母を救うことができる」と書かれた父の日記を発見。パパスの遺志を受け継ぎ、冒険へと旅立つ。次々と立ちはだかる試練の数々、ビアンカとフローラをめぐる究極の選択など、リュカの壮大な冒険が描かれる。(ドラゴンクエスト ユア・ストーリー : 作品情報 - 映画.comより)
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71点
この作品の感想を客観的に見ていると、中身を絶賛している人ほどラストの展開が許せなくて酷評に至る人が多い気がしました。ラストが許せなく、酷評したいがために中身を絶賛する、といった順番の人もいそう。何かをアゲる時に何かをサゲる、逆に何かをサゲる時に何かをアゲる、といった安易な表現方法。
個人的には正直かなり残念な演出が多い作品だったので、そりゃこれを絶賛する人とは価値観が合わないなとも思いました。
にしても、にしてもですよ?最後の展開で敵役に言わせた強烈な言葉をこの映画のメッセージとして受けてしまうのはどうかと思いますよ。
アレを言ったのは敵役で、それに対してキッチリケリを付けて終わっているわけで、どう取ってもアレを逆に取るのはとんだ勘違い坊やですよ。今一度見返した方が良いかと思われます。
当然ながらそこをしっかり理解した上で、中身が良かったのに最後の展開はいらなかった。といったシンプルな酷評の方が全然筋が通っていて理解できます。
中身が良かったならあの展開は余計な物でしたよ、間違いなく。ただ、自分としては良いとは思えなかった。だからこそラストにわかる衝撃の事実に「なるほど!」と感心してしまいました。
確かにCGは表情も豊かでかなりクオリティが高く、海外の大きな作品にも全然負けていないくらい素晴らしい仕事をされていたと思います。しかし、そこに乗せられる山崎貴監督による例の演出、脚本部分の「あざとさ」がより綺麗に映ってしまうという、個人的には残念な印象を受けてしまいました。
ここから徐々にネタバレを解禁していきますけれども。例えば、少年時代の主人公リュカにわざわざ寝言で言わす「父さんは世界一強いぞ」だったり、名シーンと言われているビアンカへのプロポーズシーンだったり、キッズはこれで笑うやろ的な、ウンコまみれのリュカとヘンリーに対してオークキングに言わす「ウンコくっさー!」「ぇええ!」だったり、これも名シーンと言われているアルスが天空のつるぎを抜くところだったり。
覚えているだけでもこれだけ出てくる「あざとさ」の臭うシーン。
名シーンと言われているビアンカへのプロポーズ、そしてアルスが天空のつるぎを抜くシーン。
もっとやりようあったんじゃないかと言うような「残念」な演出、脚本。
ビアンカへのプロポーズシーン。
リュカ「もっと好きな娘がいるのに気付いちゃったんだ」
ビアンカ「はぁ?なにそれ!あんたもしかしてそこら辺の女にパフパフされたんじゃないでしょうね!」
ここは良いですよ!とても良い!
リュカ「そいつはさ、昔も今も背中を任せられる最高の相棒だけど…」
歩き出すリュカ
ビアンカ「ちょっとどこ行くのよ!」
リュカ「上から目線で口やかましくて生意気で…」
ビアンカ「あ…」
良いですよ!気付いちゃったビアンカ!表情も素晴らしい!なんか歩き出したリュカがちょっと気になるけど!
リュカ「でも笑うと最高に可愛い」
振り返るリュカ
ビアンカ「え…」
顔を赤らめるビアンカの手を取り、ひざまずくリュカ。
ビアンカ「あ…」
リュカ「ビアンカサントアルカパ!」
ビアンカ「ハイ!」
リュカ「リュカエルケルグランバニアは願う!どうか僕と生涯の相棒になってください!」
ビアンカ「言っちゃったね…もう…言っちゃったんだからね!もう戻せないんだからね!その気になっちゃったんだからね!」
ああああああんもぉぅかわいいなあああ有村架純ぃいいい!
じゃなくてさもう!そうじゃないだろ!っていう、これはあくまで個人的な想いですけど、急にイケメン紳士風な演出させてなんだか台無しですよ!プロポーズと言ったらこの形!みたいな、そうじゃないだろ!ていうね。
「笑うと最高に可愛い」
とかもうゾワっとしちゃいますよ、いらないそういうくっさい台詞!もっとだんだんビアンカが気付いてドキドキしてる感じを長引かせて欲しかった。そしてもう完全に気付いたビアンカに対して「生涯の相棒に…なって……欲しいなぁなんつって」みたいな
ビアンカ「なにそれ…フフッ」
みたいな、ね。完全に妄想が暴走してきました。そこらへんはもっと上手いことやってくれたら良かったなー、なんて思ったりもしました。
ビアンカの「ハイ!」とか「言っちゃったね…もう言っちゃったんだからね!〜」の部分もなんだかゾワゾワするポイントでした。いいよそういうオタク向けアニメに出てきそうな気持ち悪い台詞、みたいな。
アルスが天空のつるぎを抜くシーンも確か間違って渡して抜けちゃった演出だったと思うんですけど。そこはアルスのムーブを見て自分の息子だと気付いたように、勇者はアルスだと確信を持って渡した方がグッとくる演出になったんじゃないかと思いました。
アルスが赤ちゃんの頃に天空のつるぎが震えるシーンもそこに入れて確信に繋げる演出にしていたら…なんて思ったり。
あと、伏線の置き方も雑過ぎる気がします。
良い伏線というのは自然に置かれていて、回収された時に初めて意味のある物だったとわかる物が良い伏線だと思うわけです。
この作品に出てくる伏線は全部意味ありげに置かれてしまっているのです。少年リュカに声をかける顔が隠された青年。
脳裏に浮かぶゲーム内に出てくる枠で表示される設定画面。
明らかに不自然。絶対何かあるとわかる伏線の置き方。雑い…
しかし、そんな自分にも気付けなかった大きな伏線が最後に待ち受けていたのです。これには本当に関心させられました。
-ここからネタバレ-
なんと、この世界は最新ゲームの中の世界だったのです。
体験型ロールプレイングゲームといったところか、懐かしのドラゴンクエスト5の世界に入って冒険が出来る。夢のゲーム機ですね。
これで個人的な全てのモヤモヤが晴れたのです。最新ゲームの技術を前面に出す余り、脚本、演出部分には粗が残ったまま出てきた物であるということ。粗があったとしても、あの思い出深いやり込んだゲームの中に入れるだけでも最高に楽しい体験になる。
確かに演出、脚本部分も完璧にしていたら100点満点の最新ゲーム機ですよ。でもそれをしてしまうと逆にリアリティが無くなるというか、「最新ゲーム機が故の粗さ」という物がリアルさに繋がっていると自分は感じました。
なんかめんどくさいからダイジェストにしちゃえ、的な所の残念な構成も全てはゲームを始める際に設定出来るゲーム内の設定、リュカの脳裏に浮かんだあの設定画面はここの設定画面だったということですね。飛ばす設定にしていたのでダイジェストで飛んでいた、という。つ…繋がる!
そして問題の箇所、ゲーム内に起こるバグ。主人公以外の動きが止まり、ウィルスが語りかけてくる。
ウィルスというよりハッカーですね。ハッカーがその最新ゲーム内に入り込んで、体験型ドラゴンクエスト5に熱中する大人に対して中傷の言葉を吐くわけです。
「大人になれよ」
このシーンを見たときにどう感じるのか、個人的には子供染みてるのは完全にハッカー側だと思ったわけです。
こんなマウントを取りたいがためにハッキング作業を一生懸命やっていたわけですよ彼は。
ハッカーというと何か格好良い印象を受ける人もいるかと思いますが、色々な映画を見ているとハッカーてそんな格好の良い人って出てこないんですよ。だいたいが陰キャの気持ち悪いオタクみたいな感じで出てくる。
ましてやこんな何の生産性もない、ただマウント取りたいだけのハッカーなんてそういうくそダサい陰キャオタクに決まってますよ!
おそらく監督自身もそう思ってこの敵役に「大人になれよ」なんてクソダサ台詞を吐かせたはず。そしてそれを打ち倒して終わることで、
『どんな子供染みた演出のゲームに仕上がっていたとしても、それを大人が懐かしみ素直に楽しむことは決して馬鹿にされるようなことではないし、それを馬鹿にするような奴らはこのハッカーのようなクソダサ陰キャオタクと同じだ!』
といったメッセージを込めているのだと自分は感じました。
ゲーム内でハッカーに反撃する術もしっかり伏線として置いてあったことにも自分は関心しました。
冒頭からこいつただ可愛いマスコットキャラとして出しただけだろ、みたいな何も仕事をしない、仕事をするのかってシーンでもただ変装しただけなスラリンという仲間のスライムにまたあざとさを感じ続けていたのですが、まさかのこいつがウィルスに対抗するためにゲーム内に置かれていたウィルス対策ソフトだったという伏線回収!
しかも初めて出した声、その声があの山寺宏一さんという見事としか言いようがないキャスティング。見事です。
とてもリスペクトの無い感じで恐縮ですが、鼻から舐めた目で見ていたことが功を制したというか、素直にこの大きな伏線には楽しませてもらいました。
上げなのか、下げなのか、どちらにも寄れていないようなレビューになりましたが、これは上げですよ!
上げてる人には下げられ、下げてる人にも下げられそうな記事になってしまって残るのは損だけみたいな感じになりましたが、やはり自分に嘘はつきたくないというか、とにかく「あざとさ」には敏感な自分として自分を綺麗に魅せるよりは思ったことを素直に表現していきたいと思っております。
ここまで読んでいただきありがとうございました。では。
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