『オールシングスマストパス』をNetflixで観た。商業主義に全振りしている日本の音楽業界でだけ生き延びたタワーレコードの栄枯盛衰を記したドキュメンタリー。
オールシングスマストパス
『タワーレコード』
アメリカ発のレコード屋。通称タワレコとして日本でも知らない人はいないくらい有名なお店でしょう。しかしこのお店、今や日本にしか無いのである。「NO MUSIC, NO LIFE」は日本発、タワーレコードと日本には確かな絆があった。
盛況なタワーレコードが衰退するまでを創業者ラス・ソロモンと当時の幹部や従業員、そして自称一番タワレコに金を落としたミュージシャン、エルトン・ジョンへのインタビュー等を通じて振り返る。
アメリカ発の大手レコードチェーン「タワーレコード」のドキュメンタリー。米国で生まれ、世界各国へと広がり、やがて店舗が次々と閉鎖されていくまでの栄枯盛衰を、創業者のラス・ソロモンはじめ、ブルース・スプリングスティーン、エルトン・ジョン、デイブ・グロールらアーティストたちのインタビューも交えて描いた。監督は名優トム・ハンクスの息子で俳優のコリン・ハンクス。(以上、映画.comより)
予告編↓
78点
このドキュメンタリーを観てまず思ったのが、「タワレコ潰したのやっぱショーンパーカーおめーだこのやろー」でした。
フェイスブック初代CEOであり、音楽ファイルの共有サービス『ナップスター』創業者。このナップスター、Spotifyの原型なんて言い方している人がいてびっくりしちゃいますよまったく。
ナップスターというのはいわゆるP2P技術を用いた音楽ファイル共有ソフトです。日本では音楽ファイル共有ソフトとしてwinmxやwinnyなんてものが一時期流行していましたけど、ウィルスへの恐怖と絶対ヤバいよなこれってのがあって手を出しづらい空気感がありました。流行ってましたけど。簡単に言うと他人が共有しているファイルをタダでダウンロード出来てしまうソフトです。
利用者のコンピュータ同士でのやり取りなので中心でデータを管理するサーバには「物」が無い。だから中心にいる人は違法ではないという理屈。
ショーンパーカーの悪どいところは訴訟されるのを予見して早めに多くのシェアを獲得しに走ったというところです。
最近の日本であった漫画村を巡る流れを故意的に作っていた。漫画をタダで読んでおいて「公式が悪い!」なんて暴論を吐く人たちが多くなると抑制出来なくなる。
winmxでも当時、利用者を捕まえるにも多すぎて捕まえられない状況にあって、何GB以上アップロードした人から捕まえていく、みたいなのありましたね。実際捕まっていた。
ショーンパーカーは売名から売却するまで想定していたらしいんで、漫画村も公式に買われろなんて意見にもなんか腑に落ちない部分が出てきますね。やったもん勝ち的な。
そんなナップスターの流行で大打撃を喰らったのが、盛況な音楽業界とともに多くの地域に展開していたタワーレコード。
「タワレコに行けばなんでも見つかる」というほど在庫を多く保つシステムのタワレコ、急速に「物」が売れなくなってしまう現象が起きてしまったらそら大変です。
当事者が語るそこからの衰退、もっとショーンパーカーをdisってもいいんじゃとか思ってしまいました。みんなに愛されるタワレコを踏み台として潰して飛んでったわけですから。
タワレコがどんなに愛されて成長していったか、自由な職場を提供することにより、まずは従業員から愛され、客との距離も近いからお互いに好きな音楽を共有できる。気になった音楽はタワレコならすぐに見つかる。
タイトルの「オールシングスマストパス」訳すと「万物は流転する」
音楽業界の移り変わりとタワレコの立ち位置、レコードからCDへ、そこら辺の当時の感覚等も見どころです。
海の向こうでは音源のデジタル化によって「物」が売れなくなり、無くなってしまったタワーレコード。ここ日本では未だに「物」主義。未だに現金払いが主流、ゲームもパッケ版が未だに売れる。CDには握手券までついてる!
プチガラパゴス日本では俄然CDが売れていた。過度なマーケティングでも広告を打てば打つほど確実に売れる。ミュージシャンより裏方の方がおいしいシステム、金が入ればまた広告。同じCDを何百枚も買わせる売り方、商業主義に全振りした日本の音楽業界でタワーレコードは盛況を続けていた。
海外のミュージシャンが日本へ来るとタワーレコードを見て感動するらしい。みんな通ったお店、タワーレコード。私もよく通っていました。今はiTunes…
日本はジャスラックという悪徳企業のおかげでクラウドを使った便利なソフトが使えなかったりするんでiTunesが一番便利だったりするんです。CD買っての同期作業も面倒臭い。うちにある大量のCDから抜粋して同期したけど一苦労でした。
ほぼ黒寄りのグレーであるナップスターに対して公式に一曲単位で安く売るiTunes。iTunesはやり手だなあ、なんて思ったりもしました。
タワーレコード創業者とその仲間たちの当時の情熱が感じられる良いドキュメンタリーでした。
- 作者: 平間至
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2004/11/18
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