毎日Netflix

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主にNetflixで観た映画の紹介、劇場で観た映画も。

傑作『聲の形』をNetflixで観た。「人と人が互いに気持ちを伝えることの難しさ」を描いた作品。嫌悪感で見えにくくなる『赦し』を丁寧に描く賛否分かれるアニメ映画。(ネタバレ)

聲の形

 地上波初放送と聞いて気になり、ちょっと見返すつもりで二度目の鑑賞を始めたら全部観てしまった。ネットフリックスに来た時に賛否分かれるこの作品を興味本位で観たのが最初。こんな傑作だとは思いもよらなかった。
 観るのが辛くなるほどのいじめ描写に「いじめっ子は一生後悔なんかしない、のうのうと生き続けるのだ」という論で嫌悪感に支配されてしまうと酷評側に回ってしまうかもしれない。私もその論は間違ってはいないとは思う。ただ、これは創作であり、後悔し、自分の罪を背負い続ける稀な加害者を追った作品なのである。

週刊少年マガジン」に連載され、「このマンガがすごい!」や「マンガ大賞」などで高い評価を受けた大今良時の漫画「聲の形」を、「けいおん!」「たまこラブストーリー」などで知られる京都アニメーション山田尚子監督によりアニメーション映画化。脚本を「たまこラブストーリー」や「ガールズ&パンツァー」を手がけた吉田玲子が担当した。退屈することを何よりも嫌うガキ大将の少年・石田将也は、転校生の少女・西宮硝子へ好奇心を抱き、硝子の存在のおかげで退屈な日々から解放される。しかし、硝子との間に起こったある出来事をきっかけに、将也は周囲から孤立してしまう。それから5年。心を閉ざして生き、高校生になった将也は、いまは別の学校へ通う硝子のもとを訪れる。(以上、映画.comより)


予告編↓


92点

-ネタバレ-

 小学生の頃いたガキ大将って感じの主人公将也。そこに聴覚障害者の西宮が転校してくる。小学生ならではの残酷ないじめが始まる。最初は軽いイタズラ、動じずに仲良くなろうと向き合ってくる西宮に「文句あるなら言えよ」といじめがエスカレートしていく。
 周りを巻き込んでのいじめ、問題発覚、責任のなすり付け合いからのいじめの首謀者である将也がいじめの対象に変わるというすごく女子っぽい流れ。ここら辺がすごくリアルで嫌悪感MAX。西宮の「これでも頑張ってる!」と叫ぶ本音に心が揺さぶられる。
 教師も先に耳が聞こえない件を説明してあげれよとも思ったがこの教師を良くも悪くも描かないことでいじめが自然発生しやすい環境を描いているのかもしれない。
 
 高校生になった将也はしっかり後悔し、反省している。手話を勉強していることがその証明であり、ずっと心に残っていたことを示している。
 自分の犯した罪を償うために死ぬ気で西宮に会いに行くが、西宮の妹である結弦が嫌悪感を抱く者の代弁をするような言葉を吐く。

 「自分を満足させるためだけにきてるなら帰ってください」

 随所にこのような将也に対する断罪の言葉を散りばめることによって将也の犯した罪を思い出させ、罪の印象を軽くしない。結弦のそれや共にいじめていた植野の「罪悪感的な?」「友達ごっこ」という台詞。自分が可愛い川井の直接的な暴露もそう。
 将也を『自分勝手』と突き放せないように丁寧に描かれる。

 植野というキャラは感じの悪い描かれ方をしているが考えは一貫していて、障害者は常に一方的に援助を求める、平等を求めるならそっちも頑張れよという間違った価値観を持っていると感じた。間違った価値観を持っているだけでたまに一理あるかもと思ってしまうことを言うのでただの「嫌なやつ」になっていない。気持ちが上手いこと伝わらないことですれ違いが起こる。

 西宮は自分のせいでみんなが不幸になるといった加害者意識が強くなり、死を選ぶわけだが、ここら辺の西宮の行動を「障害者を弱い者として描いている」なんて指摘があったりするらしい。
 常に周りと仲良くしようと努力し、「これでも頑張ってる!」と本音を叫ぶ者がどうして弱く見えてしまうのか私にはわからない。寧ろとても強く感じた。

 心を閉じた将也の視界に映る人の顔にバツ印が貼られる演出。ちょっとしたことでそれが剥がれたり、貼られたりする。最後、みんなの気持ちが繋がり一斉に剥がれていく。良い演出です。
 人が何かを話している時自分の悪口を言っていると思ってしまう疑心暗鬼のシーンもわかるわかると頷いてしまった。

 そしてきつい内容の中、笑いを提供してくれるビッグフレンド永束くんのキャラがサイコーです。映画に影響されてる感満載の行動にニヤニヤしてしまいました。

 書きたかった事が上手く書ききれないほど複雑で難しいところを描いた映画でした。マイベストアニメ映画トップ10には間違いなく入ってくる作品、日本のアニメは終わっていない!

 ちなみに終盤、西宮が将也に対してやった小指と小指を合わせる手話は「約束」という意味だそうですよ。

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