『はじまりへの旅』をNetflixで観た。街を離れ、森で暮らす一家。まるでポルポトの原始共産主義を上手く成功させているかのような生活。そして本で得た知識しか持たない者達が街に降りてくる。一国の主人次第で国は良くもなり、悪くもなる。笑えて泣ける傑作。
はじまりへの旅
ポルポトの原始共産主義、貨幣を廃止した完全自給自足生活。獲れた物をみんなに分け与える。誰もが一度はそんな生活も良いかもと思ったことがあるのではないだろうか。
ポルポトのソレは行き過ぎて崩壊したが、その思想を取り入れ、森に住みながら文明の利器を上手く活用しつつ子供に勉強も教え、知識を与える。そんな父親、ベンが率いる一家が、入院中の母が亡くなり、葬儀に出るため街に出る。
森での生活に反対する義理の父親とベンとの対立。現代社会と触れ合うことにより不安と不満が募る子供。
悩むベンがする決断。そして妻の願いは叶えられるのか。
ビゴ・モーテンセンが大家族の父親役を演じ、森で暮らす風変わりな一家が旅に出たことから巻き起こる騒動を描いたロードムービー。現代社会から切り離されたアメリカ北西部の森で、独自の教育方針に基づいて6人の子どもを育てる父親ベン・キャッシュ。厳格な父の指導のおかげで子どもたちは皆アスリート並みの体力を持ち、6カ国語を操ることができた。さらに18歳の長男は、受験した名門大学すべてに合格する。ところがある日、入院中の母レスリーが亡くなってしまう。一家は葬儀に出席するため、そして母のある願いをかなえるため、2400キロ離れたニューメキシコを目指して旅に出る。世間知らずな子どもたちは、生まれて初めて経験する現代社会とのギャップに戸惑いながらも、自分らしさを失わずに生きようとするが……。監督は「アメリカン・サイコ」などの俳優で、「あるふたりの情事、28の部屋」で監督としても高く評価されたマット・ロス。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の監督賞をはじめ、世界各地で数々の映画賞を受賞した。(以上、映画.comより)
予告編↓
90点
身体を鍛え、本を読み、文武両道を実行させているベン一家。焚き火を囲み音楽を嗜む。反抗期の次男もいるが、一家の笑顔は絶えず、充実した毎日を送っている。
どのようなことでも子供の質問には答える父。答えづらい性交についての質問にもしっかり答える。そんなベンが降り立つ下界での振る舞いに周りが困惑する。あるべき姿はどっちなんだろうと考えさせられる。
「日本の女は簡単にやれる」というのが世界の常識になっている昨今、性交についての教育を全くしない日本の性教育事情も関係してるのでは、なんて思ったりもします。
ゴム無し中出しした男性が生理の周期を女性に聞き、根拠の無い「その時期なら大丈夫」なんて台詞を知的な口調で説明するだけで納得する女性がいたり、挙げ句の果てには「基本的に人間は妊娠しづらい動物」なんて説明してたりするようですよ!笑っちゃいますね!
そんなストレートな父、ベンはチョムスキーの誕生日だかに子供へプレゼントするんですけどそのチョイスもまた、ヒットガールかよってチョイス。
ここで出てくるチョムスキーというのはアメリカの哲学者ですね、無政府主義、支配されない社会思想を唱えていた人です。ベンの思想がしっかり理解できる。
初めて現代社会と触れ合う子には父への不満が生まれる。義理の父と子との板挟みになるベン。本を読んで知った知識以外知らないことを体感し、子もまた悩む。
一種の宗教を見ているような感覚。宗教観の無い日本人からすると悪いイメージしか湧かない物だろうが、私は宗教の良いところをこの映画にも見ました。
解けないマインドコントロール、仲間意識。悪いイメージのあるこれこそ宗教のストロングポイントであると私は思っています。
常識を外れた彼らなりの正しい行いに私は感動しました。
原題の『キャプテンファンタスティック』もすごい良いですね。
fantastic:現想的で、夢を見ているようなさま。
随所に散りばめられるユーモアに笑い、子供の成長、そして父の成長に心が動く。一風変わった真の家族愛をこの映画に見ました。
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